奈良の室生寺と言えば、山深い場所にある隠れ里のようなお寺です。
近鉄の駅からバスで30分ほど行かないとたどり着けないため、公共交通機関でしか行けない人にはなかなか難易度が高い観光地だと思われがちですね。
しかし一度行ってみると、室生寺のとりこになってしまうほど素晴らしいお寺です。
バスは山の合間を流れる川沿いに停車します。
門前には数件のお土産屋さんがありますが、まさに自然の中にある山寺という雰囲気。
そして橋を渡り境内に進むにつれ、四季折々の自然に圧倒されてしまうことでしょう。
特に5月の新緑と秋の紅葉は圧巻です。
シャワーのように頭上に降り注ぐ紅葉などは、市内では決して見ることのできない光景です。
春には桜やシャクナゲも美しく、6月には蛍が飛びます。
また雪の室生寺もポストカードになるなど、どの時期の参拝も心に残ること間違いなしです。
豊かな自然に囲まれた境内を、砂利を踏みながらゆっくり進み、石段を上がると次は仏像のワンダーランドが広がっています。
ここ室生寺は真言密教の寺院。
本来は高野山には女性は入ることはできませんでした。
しかし室生寺は「女人高野」とも呼ばれ、昔は禁止されていた女性の参拝が、ここなら許されていたということでこんなに山奥にも関わらずたくさんの女性がお参りをしてきました。
そして京都から離れていたり、山奥にあるということから戦火をまぬがれ、文化財がたくさん残っていることもおすすめポイントです。
特に平安時代からの彩色がくっきり残る金堂の仏像群は、あまりの美しさにうっとりしてしまいますよ!
金堂中には風は吹き抜け、やわらかい表情の観音様に癒される時間になることでしょう。
国宝揃いにも関わらず、間近でゆっくり見ることができるのも奈良の山寺らしいですね。
またもうひとつの有名な文化財は、日本で一番小さいとされている五重塔です。
高さ16m、平安初期に建てられたとても女性らしいたおだやかな塔でした。
しかしこの五重塔は、平成10年の台風で大きな被害を受けました。
樹齢数百年の木々が塔に倒れ掛かり、壊滅状態になってしまったのです。
この惨状がメディアで報じられると日本中から寄付が集まりました。
時の総理大臣であった小渕氏が自ら電話をかけてこられたとも言われています。
五条の塔は修復を終え、その美しい姿を再び見ることができます。
このようにたくさんの人に愛されてきた室生寺、一度行ってみると、日本人の心のふるさとだと実感することができる本物の「古寺」なのです。
時間があり足に自信がある人は、五重塔の横にある石段にチャレンジしてみてください。
修行のような少しキツい石段ですが、奥の院まで行くことができますよ。
室生寺周辺のおすすめグルメ
橋本屋
室生寺の門前には数件のお店がありますが、その中でも有名な老舗が橋本屋さんです。
こちらは旅館でもあるのですが、入りやすく昔ながらの雰囲気を残した食堂でランチをいただくことができるのです。
特に山菜のお料理がおすすめで、季節の山の味がおいしく味わえますよ。
素朴な味ですが、小鉢がたくさんついておりいろいな食材を楽しむことができます。
また季節には川魚などのメニューも出てきます。
何より地のものを使った優しい味のお料理なので、静かな室生寺で美にひたった後によく合います。
天気の良い日には川のせせらぎを聞きながら食事をすることができます。
時間を忘れてのんびりできるお食事処です。
室生寺周辺のおすすめ宿・ホテル
本郷温泉 かぎろひの里 椿寿荘
室生寺の周り宿と言えば前述の橋本屋さんくらいなので、奈良市内や桜井市で泊まることが多くなるかと思います。
しかし、せっかく室生の里まで行き山の空気を感じたのならば、そのまま近隣に泊まってみましょう。
「かぎろひの里 椿寿荘」は宇陀にある小さな宿です。
宇陀と言えばこれまた奈良の隠里。
室生寺からは駅まで戻り車かタクシーで行くことになります。
また近鉄の榛原駅からは送迎もお願いすることが可能です。
なかなか行きにくい場所ですが、だからこそ非日常空間で自然の香りをたっぷり吸って休むことができます。
特に豪華ではありません。
しかしスマホの電源を切って深呼吸するにはとても良いお宿です。
近くには有名な又兵衛桜があります。
これは山肌に立つ、一本桜の老木。春には神秘的な姿を見せてくれます。
宇陀はその他にも薬草の里として知られています。
少し行くともう三重県、忍者の里にも近いため余計に「隠里」感が味わえますよ。
何もないところに、何かがある。室生寺とその周辺でじっくりと人生のことを考えてみてはいかがでしょうか。
室生寺まとめ
室生寺は「女人高野」という名の通り、とても安らぐたおやかなお寺です。
その女性らしさが真言密教という荒々しい宗派と合体し、ここまで素晴らしい美術や信仰になったのか、と感動できる場所ですよ。
とにかくどこを見ても美しいので、まだ行ったことのない人は時間を取って参拝してみることをおすすめします。
きっと心をすっきりさせて帰ってこることができますよ。