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奈良の大仏殿交差点を北に向かえば、東大寺の南大門に至りますが、この道を南に向かい、右手に浮見堂を見ながら更に少し南に進むと高畑交差点に到着します。
この交差点から南東の一帯が高畑町です。
この辺りには、振り土塀に囲まれた住宅や、新しい住宅街が混在し、何となく独特な雰囲気を醸し出しています。
そんな高畑に新薬師寺と言うお寺があります。
この新薬師寺は、西ノ京にある薬師寺とは全くの別の寺院ですし、「新」と名前に付いているのは、新旧の「新」ではなく、霊験新たかな薬師を祀ると言う意味で付けられた名前で、新たかの「新」が冠されたものです。
この新薬師寺は、聖武天皇の病気平癒を願い、妻である光明皇后が747年に創建された古い寺院です。
平城京から少し離れた高円山の麓の清らかな地である高畑に建立されたのです。
創建当時には、現在の金堂よりも遥かに大きな金堂で、そこに七体の薬師如来像と、それぞれに脇侍の菩薩像が二体づつあり、さらに十二神将像が祀られていて、まさに浄土の様相であったと伝えられており、発掘調査によってこの壮大なお堂があった事は証明されています。
またその他に、壇院、薬師悔過所、政所院、東西の塔、庭園などが存在した大寺であった事が史料から分かっています。
残念ながら、こうした大寺の伽藍は歴史の中で失われ、現在は小さなひっそりとした寺院となっています。
南門を入ると左側に石仏群と地蔵堂があり、右側に鐘楼があります。
南門からまっすぐ伸びた参道の先に現在の本堂があります。
この本堂は、奈良時代には修法を行う為のお堂だったと考えられており、奈良時代の創建当時の貴重なもので、国宝に指定されています。
簡素で力強く、天井裏がなく構造の骨組みを見る事ができます。
この本堂の中の壇上に、薬師如来像とそれを取り囲み守護する十二神将像が安置されています。
いずれもが国宝に指定されており、仏像好きには余りにも有名なもので、多くのファンが居るほどです。
この十二神将はいずれも激しい怒りを表したほぼ等身大の立像で、日本最古最大の十二神将像なのです。
十二神将は、薬師如来を守護しているのですが、十二の方角を守っていることから、十二支の守護神としても信仰されおり、自分の干支の守護神が何であるかを探して見るのも楽しいでしょう。
また新薬師寺の西側には、写真好きの方、寺院の風景が大好きな方にはぜひ立ち寄ってほしい所があります。
それは、奈良大和路を撮影し続けた写真家の入江泰吉さんを記念して建設された「入江泰吉記念 奈良市写真美術館」です。
この写真美術館の設計は黒川紀章氏で、新薬師寺の隣という点から、歴史的な環境との調和に留意され、地上階を低くして、また屋根は瓦葺きにして、古都奈良のイメージを損なう事のない様に配慮した設計とされたものです。
1Fがエントランスとカフェで、地下がメインのギャラリー室となっています。
建物の南側には人口の池が配置され、ガラス張りのカフェから見れば、目線が池と同じ高さとなり、まるで池に浮いているかの錯覚を受ける造りになっています。
新薬師寺周辺のおすすめグルメ
新薬師寺を訪れて昼食を摂られるなら、この高畑界隈にいくつかある元々の民家をカフェやレストラン等としてリノベーションされたお店を利用されると良いでしょう。
奈良町の様な小さな町家ではなく、それぞれが広い庭を持つ邸宅である点が特徴で、奈良公園界隈の観光客でごった返す雰囲気とは全く違った静寂の中で食事を楽しむ事ができます。
具体的なお店としては、志賀直哉の旧邸の前にある杉幸園がお勧めです。
ここのお店には、1800円から3000円程度のミニ懐石風の女性好みの弁当を中心にしたコースが用意されており、予算に合わせて楽しめるのも嬉しいお店です。
新薬師寺周辺のおすすめ宿・ホテル
新薬師寺を訪れて、宿泊されるなら、奈良公園周辺の宿泊施設が良いでしょう。
堂々とした木造の大きな建物が目を引く格式と伝統のある奈良ホテルでクラシカルな雰囲気を楽しみ、リッチに過ごされるのも、自分へのご褒美としてたまには良いでしょう。
また、せっかくの奈良だからと純和風の旅館がお望みなら、春日大社の一の鳥居の近くにある、元は奈良県知事の迎賓館として建てられ月日亭、公園内に小さな離れが点在する江戸三などの料理旅館もお勧めです。
もちろん、こうした高級な宿のみではなく、近鉄奈良駅周辺には観光旅館や観光ホテル、またリーズナブルなビジネスホテルもあります。
奈良は、京都に比べて宿泊施設が少ないため、宿泊されるなら早めの予約が良いかも知れません。
新薬師寺まとめ
奈良公園周辺には、東大寺や興福寺と言った超有名で観光客で溢れるお寺以外に、少し足を延ばせば奈良大和路の風情が残る地域に、寺院や仏像好きを虜にする寺院が沢山あるのです。
その代表の1つが高畑にひっそりと建つ新薬師寺です。
紅葉の時期に土壁に囲まれた古いお屋敷が立ち並び、鄙びた雰囲気が残る高畑にある新薬師寺を訪れ、国宝の薬師如来像とそれを守護する十二神将像を拝観すれば、きっと深い感銘を受けられる事でしょう。